長興産SESの買収スキーム 香港とルクセンブルクのSPV仕立て 手付金の出所を添えて

今回は、主にCalcio e FinanzaとIl Sole 24 Oreの記者Carlo Festaによる記事に基づき、手付金(12月13日に支払われた2度目の€100M)の出所に触れながら、ミランの買収スキームを解説する。


www.calcioefinanza.it
www.calcioefinanza.it
www.calcioefinanza.it
carlofesta.blog.ilsole24ore.com
www.corriere.it

会社一覧

まずはミランを買収する予定にある投資ファンドとそのファンドが設立した特別目的会社SPV)を一覧にして紹介する。似た名前の会社ばかりなので、以後混同しないように読み進めていただきたい。

Sino-Europe Sports Investment Management Changxing Co. Ltd.(SES)
所在地 長興
設立 5月26日
資本金 1億人民元(およそ€13.7M)
実質的にミランを買収するとされる投資ファンドである。政府系ファンドHaixia Capitalが参画することと会長がYonghong Liという人物であること以外は不明である。

Rossoneri Sport Investment Co., Limited
所在地 香港
設立 6月28日
資本金 10万香港ドル(およそ€12,000)
株主 Rossoneri Changxing Sports Investment Management Ltd.(後述)
創業者 Chen HuashanYonghong Liの協力者の1人、おそらく彼の弁護士)
SESが設立したSPVとされる。

Rossoneri Champion Co. Limited
所在地 香港
設立 2016年9月26日
資本金 1香港ドル
株主 Chen Huashan
SESが設立したSPVとされる。

Rossoneri Changxing Sports Investment Management Ltd.
所在地 長興
SESが設立したSPVとされる。

Rossoneri Sport Investment Luxembourg S.à r.l.
所在地 ルクセンブルク
設立 2016年12月21日
資本金 €12,000
株主 Orangefield (Luxembourg) S.A.(信託会社)
SESが設立したSPVとされる。

手付金の出所

タックス・ヘイヴンとして名高いヴァージン諸島のトルトラ島に所在地を置くWilly Shine International Holdings LimitedがRossoneri Championの資産を担保にして(設定者はRossoneri Sport)、8億3000万香港ドル(およそ€102M)をRossoneri Championに貸し付けた。その後、Fininvestに対してRossoneri Championから2度目の手付金€100Mが振り込まれた。つまり、手付金の出所は中国ではなくヴァージン諸島だった。

買収スキーム

資本を移動するための許可がクロージングの期日である3月3日までに中国政府から下りないであろうと言われている。つまり、中国からイタリアに送金できないことになる。そこで香港あるいはオフショア(必ずしもヴァージン諸島とは限らない)にある資金を使うだろう。
買収スキームは以下の通りである。
Rossoneri SportRossoneri Sport Investment Luxembourgの全12,000株を12月21日にOrangefieldから取得した(それに伴い、Chen HuashanRossoneri Sport Investment Luxembourgの取締役になった)
Rossoneri Sport Investment Luxembourgが3月3日までにFininvestからミランの株式99.93%を取得する

簡単に支配関係を図示すると以下のようになる。
Rossoneri Changxing Sports Investment Management
↓100%
Rossoneri Sport Investment
↓100%
Rossoneri Sport Investment Luxembourg
↓99.93%
Milan