A Milan gh'è domà el Milan.

カルチョと財務

8代目の王よ、永遠なれ

トッティの別れの言葉は、いろんな人が訳しているが、私の場合は彼らのように美しく意訳することはできない。イタリア語とローマ方言の勉強という意味も込めて、彼の生の言葉を書き起こし*1つつ、それをできるだけ忠実に訳したもの、つまり硬い翻訳を提供したいと思う。ローマの公式サイトに掲載されている文を読み始める前に彼が話した部分も掲載する。

 

「ローマ方言は関西弁に似ている」という持論から、ローマの訛りが抜けないトッティの言葉を関西弁にして翻訳するか迷った。しかし、猛虎弁と誤解され真剣に読まれないことが想像できたので、標準語で訳す。トッティのイタリア語がいかにローマ方言に影響されているかは、原文に脚注を付すことで示した。イタリア語を学習している方は読んでみると面白いだろう。

 

 

映像を見ながら以下の訳を読んでもらえるとよいかもしれない。

 

www.asroma.com

 

(マイクを取るトッティ

  

Shhh, eh, è facile per voi. Shhh, eh, shhh.

しーっ。(静かにすることは)君たちにとって簡単だ。しーっ、しーっ。

 

Eh, ci siamo. È arrivato*2 il momento. 

ようやくだ。その時が来てしまった。

 

Si sente?

聞こえる?

 

La folla: Sì!

観衆: はい!

 

Sembra un concerto. 

コンサートのようだ。

 

Purtroppo è arrivato*3 questo momento che speravo che non arrivasse*4 mai. 

残念ながら、来てほしくないと望んでいたこの時が来てしまった。

 

(拍手)

 

Purtroppo è arrivato*5.

残念ながらその時が来てしまったのだ。

 

(拍手)

 

Questi giorni ho letto tantissime cose su di me. Belle, bellissime. Ho pianto sempre*6, tutti i giorni, da solo*7, come un matto. 

 

ここ数日、私に関する大変多くの記事を読んだ。素晴らしい、とても素晴らしい記事をね。私は毎日、ずっと独りで狂ったように泣いた。

 

(拍手)

 

Perché venticinque anni non si*8  dimenticano così, con voi dietro le spalle, che mi avete spinto nel bene e nel male, anche nei momenti difficili soprattutto.

なぜならばこの25年は忘れられないからだ。君たちは良い時も悪い時も、特に難しい時に、陰で私を後押ししてくれた。

 

E per questo voglio ringraziarvi, a tutti quanti, qua, anche se non è facile. 

こうしたことから、私は君たち、ここにいるみんなに感謝したい。それは簡単ではないのだけれども。

 

(拍手)

 

Lo sapete che non sono*9 di tante parole, però le penso*10. E questi giorni con mia moglie ci siamo messi a tavolino e gli*11 ho raccontato un po' di cose, un po' di anni vissuti con questa maglia, questa unica maglia.

君たちが知っての通り、私は口数の少ない人間だが、たくさんの言葉を考えている。最近、妻とテーブルにつき、このユニフォーム、つまりこの唯一無二のユニフォームを着て過ごした年月について、そうしたことについて、少し彼女に話した。

 

(拍手)

 

Anch'io ho scritto, abbiamo scritto una lettera per voi. Non so*12 se riuscirò a leggerla. Ci provo. 

君たちに宛てた手紙を私、いや私たちは書いた。それを読むことができるかどうかわからない。読んでみよう。

 

(拍手)

 

Se non finisco, la finirà mia figlia Chanel, che non vede l'ora di leggerla.

読み終えられない場合は、娘のシャネルが読む。彼女は手紙を読むのを楽しみにしているからだ。

 

(拍手)

 

Devo prende*13 fiato, scusateme*14. Non è facile. 

一呼吸置かなければならない。申し訳ない。それを読むことは簡単ではないのだ。

 

(観衆はトッティを鼓舞する)

 

Vado sennò si fa troppo tardi. C’avete*15 fame. È ora di cena. Io starei qua fino a altri 25 anni. 

読み始めよう。そうしないと遅くなり過ぎてしまう。君たちはお腹が空いているね。夕食の時間だ。私であれば、もう25年はここにいるのだがね。

 

(拍手)

 

Grazie Roma, grazie a mamma e papà, grazie a mio fratello, ai miei parenti, ai miei amici.

ありがとう、ローマ。ありがとう、お母さんとお父さん。ありがとう、兄さん、親戚たち、友人たち。

 

Grazie a mia moglie e ai miei tre figli.

ありがとう、妻と3人の我が子よ。

 

Ho voluto iniziare dalla fine, dai saluti, perché non so*16 se riuscirò a leggere queste poche righe.

手紙の終わり、つまり結びの挨拶から始めたかった。なぜならば、この数行を読めるかどうかわからないからだ。

 

È impossibile raccontare ventotto anni di storia in poche frasi.

ほんの少しの文で28年の歴史を語ることは不可能だ。

 

Mi piacerebbe farlo con una canzone o una poesia, ma io non sono*17 capace di scriverle e ho cercato, in questi anni, di esprimermi attraverso*18 i miei piedi, con i quali mi viene tutto più semplice.

歌か詩で語りたいのだが、私にはそれを書く能がないので、長年にわたり脚で自分を表現しようとしてきた。そのほうが何事もより単純だったからね。

 

(拍手)

 

A proposito, sapete quale era il mio giocattolo preferito? Il pallone. Lo è ancora.

子どもの頃について言うと、君たちは私の一番好きなおもちゃが何だったか、知っているか? ボールだ。今でもそうだ。

 

Ma a un certo punto della vita si diventa grandi, così mi hanno detto e il tempo lo ha deciso.

しかし、人生のある時点で人は大人になる。そう私は言われたし、時間がそのことを決めてきたのだ。

 

Maledetto tempo.

呪われた時間だよ。

 

È lo stesso tempo che quel 17 giugno 2001 avremmo voluto passasse in fretta

私たちとしては、同じ時間でも2001年6月17日*19では早く過ぎ去ってほしかった。

 

(拍手)

 

non vedevamo l’ora di sentire l’arbitro fischiare per tre volte.

その日、私たちは主審が笛を3度吹く*20のを聞きたくて仕方なかった。

 

Mi vien ancora la pelle d'oca a ripensarci*21.

そのことを思い返すと、今でも鳥肌が立つ。

 

Oggi questo tempo è venuto a bussare sulla mia spalla dicendomi: “Dobbiamo crescere, da domani sarai grande, levati i pantaloncini e scarpini, perché tu da oggi sei un uomo e non potrai più sentire l’odore dell'erba così da vicino, il sole*22 in faccia mentre corri*23 verso*24 la porta avversaria*25, l'adrenalina che ti consuma*26 e la soddisfazione*27 di esultare”.

今日、この時間が私の肩を叩きに来て、こう言うのだ。「私たちは成長しなければならない。明日から君は大人だ。ショーツとシューズを脱ぎなさい。なぜならば今日から君は1人の男なのだから。そうして近くで芝生の香りも、君が相手のゴールに向かって走るときに君の顔を照らす太陽も、君を食い尽くすアドレナリンも、狂喜する満足感も、もはや感じることはできないのだから」と。

 

Mi sono chiesto in questi mesi perché mi stiano svegliando da questo sogno*28.

この数ヶ月、どうして私はこの夢から起こされているのだと自分に問うた。

 

Avete presente quando siete bambini e state sognando qualcosa di bello… e vostra madre vi sveglia per andare a scuola mentre voi volete continuare a dormire…e provate a riprendere il filo di quella storia ma non ci si riesce mai…

想像してほしい。君たちは子どもで、いい夢を見ているところだ。お母さんは君たちを学校に行かせるために起こすのだが、 君たちは眠り続けたいから、一連のその話を再開しようとする。だが、それは叶わない。

 

Stavolta non era un sogno*29 ma la realtà.

今回は夢ではなく現実だったのだ。

 

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Io voglio dedicare questa lettera a tutti voi, ai bambini che hanno tifato per me, a quelli di ieri che ormai sono*30 cresciuti e forse*31 sono diventati padri e a quelli di oggi che magari gridano “Tottigol”.

私がこの手紙を捧げたいのは、君たち全員、つまり、私を応援してくれた子どもたちだ。すなわち、かつてはそうした子どもで今や成長して、おそらく父親になった者たちとたぶんTottigolと叫ぶ今の子どもたちだ。

 

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Mi piace pensare*32 che la mia carriera*33 diventi per voi una favola da raccontare. Questo è il pezzo più brutto.

私のキャリアが君たちにとって語るべきおとぎ話になると考えたい。ここからは一番ひどい部分だ。

 

Ora è finita veramente. Mi levo la maglia per l’ultima volta.

今、おとぎ話は本当に終わったのだ。最後に私はユニフォームを脱ぐ。

 

La piego per bene anche se non sono*34 pronto a dire basta e forse*35 non lo sarò*36 mai.

十分だと言う準備はできていないし、おそらくはそうならないのだが、きれいにユニフォームをたたむ。

 

(拍手)

 

Scusatemi se in questo periodo non ho rilasciato interviste e chiarito i miei pensieri*37, ma spegnere la luce non è facile.

これまでの期間にインタビューを受けず、私の考えを明らかにしなかったことを謝罪する。しかし、灯りを消すことは簡単ではないのだ。

 

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Adesso ho paura. E non è la stessa che si prova di fronte alla porta quando devi segnare un calcio di rigore. Questa volta non posso vedere attraverso*38 i buchi della rete cosa ci sarà "dopo".

今、私は不安を感じている。そして、その不安とはPKを決めなければならないときにゴールを前にして感じるそれではない。今回は、ゴールネットの穴から、自分の「その後」に何があるかを見通せないのだ。

 

Concedetemi un po' di paura. Questa volta sono io che ho bisogno di voi e del vostro calore,

私が少し不安を抱くことを許してほしい。今回、君たちと君たちの熱気、

 

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quello, quello che mi avete sempre dimostrato.

つまり君たちがずっと私に示してくれたものが必要なのは私なのだ。

 

La folla: Non ti lasceremo mai.

観衆: 私たちは決して君を置いていくことはない。

 

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Con il vostro affetto riuscirò sicuramente a voltare pagina*39 e a buttarmi in una nuova avventura.

君たちの愛情によって確かに私はページをめくり新しい冒険に身を擲つことができるのだ。

 

Ora è il momento di ringraziare tutti i compagni di squadra, i tecnici, i dirigenti, i presidenti, tutte le persone*40 che hanno lavorato accanto a me in questi anni.

今はすべてのチームメイト、監督、経営陣、会長、長年にわたり私の側で働いてくれた者たち全員に感謝を捧げる時だ。

 

I tifosi, la Curva Sud*41,

ティフォージとクルヴァ・スッド、

 

(拍手)

 

un riferimento per noi romani e romanisti.

つまり私たちローマ出身者とロマニスティの鑑にも。

 

Nascere romani e romanisti è un privilegio*42, fare il capitano di questa squadra è stato un onore.

ローマとロマニスティに生まれることは特権だ。このチームのキャプテンを務めることは名誉だった。

 

(拍手)

 

Siete e sarete sempre nella mia vita: smetterò di emozionarvi con i piedi ma il mio cuore sarà*43 sempre lì con voi.

君たちは私の人生の中にいるし、これからもずっとそうだ。つまり、脚で君たちを沸かせることは止めてしまうけれども、私の心は君たちと一緒にずっとそこにあるというわけだ。

 

(拍手)

 

Ora scendo le scale, entro nello spogliatoio che mi ha accolto che ero un bambino e che lascio adesso, che sono un uomo.

今、階段を降りて、子どもだった私を迎え入れてくれたロッカールームに入り、今、1人の男としてそこを去る。

 

(拍手)

 

Sono orgoglioso e felice di avervi dato ventotto anni di amore.

君たちに愛情のこもった28年間を届けたことを誇らしく幸せに思う。

 

(拍手)

 

Vi amo. 

君たちを愛している。

 

(拍手)

 

www.asroma.com


italianosemplicemente.com

 

www.treccani.it

 

*1:そのためにローマの公式サイトに掲載されているものと違う部分もある。

*2:rrの発音が弱くてarivatoと聞こえる。rrがrになるのはローマ方言の特徴である。例えば、birra(ビール)はbiraになる。

*3:同上。

*4:同上。

*5:同上。

*6:最初のsが有声音化する([z]と発音させる)のは標準イタリア語としては正しくない。単語の境界にあるsが有声音化するのはローマやラッツィオ州に限らず見られる現象である

*7:同上

*8:ziと聞こえる。トスカーナから南の地域の方言ではn, l, rの後に来る[s]をz(無声音、つぁ行の音)と発音する特徴がある

*9:zonoについては同上。

*10:penzoについては同上。

*11:標準イタリア語としてはleが望ましい。

*12:zoについては脚注8に同じ。

*13:標準イタリア語としてはprendereが正しい。動詞の不定詞が短くなるのはローマ方言の特徴である。例えば、parlareはparlàになる。

*14:標準イタリア語としてはscusatemiが正しい。iがeになるのはローマ方言の特徴である。同様にmiはmeに、tiはteに、ciはceに、viはveに、siはseになる。逆にseはsiになる。

*15:標準イタリア語としてはaveteが正しい。avereにciを付けるのはローマ方言の特徴である

*16:zoについては脚注8に同じ。

*17:zonoについては同上。

*18:attraverzoについては同上。

*19:第34節のパルマ戦に3-1で勝利し、ローマは2000/01シーズンのスクデットを獲得した。

*20:試合終了のホイッスルのことである。

*21:ripenzarciについては脚注8に同じ。

*22:zoleについては同上。

*23:coriについては脚注2に同じ。

*24:verzoについては脚注8に同じ。

*25:avverzariaについては同上。

*26:conzumaについては同上。

*27:脚注6に同じ。

*28:同上。

*29:zognoについては脚注8に同じ。

*30:脚注6に同じ。

*31:forzeについては脚注8に同じ。

*32:penzareについては同上。

*33:carieraについては脚注2に同じ。

*34:zonoについては同上。

*35:forzeについては同上。

*36:脚注6に同じ。 

*37:penzieriについては脚注8に同じ。

*38:attraverzoについては同上。

*39:pagginaと聞こえる。母音間の[g]は二重子音になるのは南部方言の特徴である

*40:perzoneについては脚注8に同じ。

*41:脚注6に同じ。

*42:privileggioについては脚注39に同じ。

*43:脚注6に同じ。