読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

A Milan gh'è domà el Milan.

カルチョと財務、ときどきイタリア語

監督と売却とバッカの値段

ミラン

ナポリの償却の方法についてリンクと画像を追加した(7月15日)

 

6月28日、ミランが新監督をモンテッラに任命したことを発表した。前セビージャ監督のエメリ、前シティ監督のペッレグリーニ、前エンポリ監督のジャンパオロ、前アヤックス監督のデ・ブールが候補として名前が挙がったり、昨シーズン途中から監督を務めたブロッキの留任をベルルスコーニが望んだりするというすったもんだの末に決着した。これぞ妥協の産物だ。では、モンテッラに決定した経緯をおさらいしよう(Corriere della SeraとGianluca Di Marzioの記事をもとに作成)。まずガッリアーニはジャンパオロ、中国側は外国人監督(エメリ→ペッレグリーニ→デ・ブール)、ベルルスコーニはブロッキをプッシュするという構図があった。だが、エメリはPSGにかっさらわれ、ペッレグリーニは要求する給与が高額で、デ・ブールは本人が納得しなかったので、中国側の目論見は崩れた。また、ガッリアーニはジャンパオロを望む(中国側も好意的だった)も、ベルルスコーニが反対した。逆にベルルスコーニが留任を強く望むブロッキはガッリアーニと中国側が難色を示した。そこで、3者(もはやこの時点ではガッリアーニと中国側は同じなので、両者というべきか)が納得できる妥協案として、モンテッラが浮上した。ベルルスコーニは最後の最後までブロッキの続投を希望したが、彼らに屈した。以上が事の顛末である。

 
次は、売却について話題を移そう。Il Sore 24 OreのMarco Bellinazzoによると、まだ彼からミランの株80%を中国のコンソーシアムに譲渡することにokが出ていない。彼に売る意向はあるのだが、彼のもとに書類が届いていないので、決断を下すのはそれからとなる。ベルルスコーニokが出ると仮契約が結ばれ、クロージングに向けてフィニンヴェストと中国側との間で作業が進められる。しかし、あのベルルスコーニのことなので、急に「やっぱり嫌だ」と心変わりすることもありうるので、僕はまだ安心する気はない。
 
最後にメインとして書きたかった話がバッカの売却額についてである。Di Marzioによると、アトレティコ・マドリッドが興味を持っているようだが、実際に彼をいくら以上で売ればミランは損しないのか気になるところである。「え、セビージャからバイアウト・クルーズで行使した€30mだ」と思ったあなた、実は帳簿上そうではない。ちょっとした計算が必要だ。そのために必要な知識については、以下の宮本恒靖氏による日本経済新聞の記事、あるいは僕のツイートを参考にしていただきたい。
 
 
ただし、ナポリは例外で定額法を採用しない。5年契約の場合(例えば、イグアイン)、1年目から5年目まで、40%、30%、20%、7%、3%の順で償却する。
 
 
話をバッカに戻すと、彼の移籍金から今までの償却費を差し引くと、現在の簿価が算出される。それがトントンの売却額となる。
 
では、バッカの移籍金はいくらなのか。実は契約解除条項の€30mちょうどではない。2015年度(2015年12月31日締め)の財務諸表を読むと、€33,286,521と書かれている。余分な€3,286,521は代理人の手数料、いわゆるコミッションだ。コミッションは選手を獲得した年度の損益計算書に一気に計上するものだと思い込んでいたのだが、どうやら手数料込みで移籍金を貸借対照表に計上して償却するのが普通らしい。例えば、€8mで獲得したはずのルイス・アドリアーノは€14m、フリーで獲得した本田、アレックス、ロドリゴ・エーリはそれぞれ€1m(おそらく兄とお亡くなりになったブロンゼッティに入ったと考えられる)、€1.125m、€8m、下部組織から昇格したドンナルンマは€1.075mの値段がついている。勘の鋭い方は、某イタリア系オランダ人の代理人が最後の2人をクライアントにしていることに気づいたであろう。彼があの体型を維持できる理由はこれなのだ。ミラン同様にユヴェントスの財務諸表でも、フリーで獲得したはずのポグバに€1.635mの値段がついた。さらに、契約更新の際に€4.53mの手数料がM.R氏に支払われたので、2014年12月31日に取得原価が€6.165mに上がった。銭ゲバである。
 
 
次は償却費について述べよう。また、財務諸表を開くと、バッカは2015年7月2日に加入し、契約年数は5年(60か月)とあり、2015年12月31日までの償却費は€33,286,521の1/10(=6/60)の€3,328,652である。よって、獲得時から2016年6月30日までのそれは€3,328,652を単純に倍にした€6,657,304になる。
 
最後に償却費を移籍金から引くと、€26,629,217この値段で売れば、ミランは得も損もしない。結論は出た。ミランがバッカを売る最低額は€30mではなく€26mだとSky Sportが報道したのもそういう理由があると僕は考えている。
 
次はFFPか新聞社の親会社の話か売却の詳しい話か、気の向いたときにそのどれかについて書こうかと考えている。