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A Milan gh'è domà el Milan.

カルチョと財務、ときどきイタリア語

ローマのFFP事情

今シーズンのローマのFFPについて、Il Sore 24 OreのMarco Bellinazzoが解説していた記事があったので、これをもとにローマのFFPがどういう状況にあるのか、説明する。
 

m.goal.com

 
2015年の5月、ローマはそれまでFFPの基準を遵守していなかったので、UEFAとsettlement agreement(和解協定)を締結した。協定の概要は以下の通りである。
対象とするシーズンは15/16から17/18までである
17/18までにとんとんにする
14/15と15/16の年度で損失を€30mまでに抑える
Aリストの登録選手の上限が通常の25ではなく22になる(15/16で基準をクリアすると、制限は16/17から解除される)
各年度で総年俸の増額禁止と移籍金の収支を黒字にする(上に同じ)
罰金は€2m科されるが、対象の3シーズンで違反があった場合に€4mが追加される(15/16で基準をクリアすると、追加の罰金は免れる)
 
 
では、今シーズンのローマはその課せられた基準、つまり14/15と15/16の2期における損失を合わせて€30mに抑えることを達成できたのだろうか。結論から言うと、ギリギリであるが達成した。よって、先述した3つの制限が16/17から解除される。めでたい。やったね(/・ω・)/
 
以下、損失を€30mに抑えられた理由を詳しく述べよう。まずローマの損失は14/15で€41m、15/16でその半分未満もあった。15/16がそれで抑えられたのは、€30mの売却益(ピャニッチの移籍金€32mによる売却益が最もウェイトを占めるのは言うまでもない)のおかげである。ここで、2期の損失が€60mほどになり、和解協定に違反するのではないかと思われるだろうが、実際にはそうならない。というのも、FFPにおいてスタジアムや練習場の建設ならびに改修とユース育成に関する費用は計算から除外されるからだ。その費用を考慮すると、損失は14/15で€25m未満、15/16で€5m未満となり、めでたくmission accomplishedと相成ったのである。やはりピャニッチかナインゴランを売らなければならない状況にあったと考えてもよかろう。
 
ローマはこれからの2シーズンでとんとんを目指さなければならない。まあ来季もCLに出場するので、ローマ首脳陣がどこまで目標を設定しているのかは知らないが、その放映権料と賞金が入るし、ユニフォームのスポンサーとして中国の企業と大型契約を結べば、それも達成できるのではないかと考える。
 
最後にローマの財政上、とても気がかりなことを書いておく。14/15の貸借対照表を読むと、€102.42mの債務超過に陥っている。大丈夫なのか……
 

監督と売却とバッカの値段

ナポリの償却の方法についてリンクと画像を追加した(7月15日)

 

6月28日、ミランが新監督をモンテッラに任命したことを発表した。前セビージャ監督のエメリ、前シティ監督のペッレグリーニ、前エンポリ監督のジャンパオロ、前アヤックス監督のデ・ブールが候補として名前が挙がったり、昨シーズン途中から監督を務めたブロッキの留任をベルルスコーニが望んだりするというすったもんだの末に決着した。これぞ妥協の産物だ。では、モンテッラに決定した経緯をおさらいしよう(Corriere della SeraとGianluca Di Marzioの記事をもとに作成)。まずガッリアーニはジャンパオロ、中国側は外国人監督(エメリ→ペッレグリーニ→デ・ブール)、ベルルスコーニはブロッキをプッシュするという構図があった。だが、エメリはPSGにかっさらわれ、ペッレグリーニは要求する給与が高額で、デ・ブールは本人が納得しなかったので、中国側の目論見は崩れた。また、ガッリアーニはジャンパオロを望む(中国側も好意的だった)も、ベルルスコーニが反対した。逆にベルルスコーニが留任を強く望むブロッキはガッリアーニと中国側が難色を示した。そこで、3者(もはやこの時点ではガッリアーニと中国側は同じなので、両者というべきか)が納得できる妥協案として、モンテッラが浮上した。ベルルスコーニは最後の最後までブロッキの続投を希望したが、彼らに屈した。以上が事の顛末である。

 
次は、売却について話題を移そう。Il Sore 24 OreのMarco Bellinazzoによると、まだ彼からミランの株80%を中国のコンソーシアムに譲渡することにokが出ていない。彼に売る意向はあるのだが、彼のもとに書類が届いていないので、決断を下すのはそれからとなる。ベルルスコーニokが出ると仮契約が結ばれ、クロージングに向けてフィニンヴェストと中国側との間で作業が進められる。しかし、あのベルルスコーニのことなので、急に「やっぱり嫌だ」と心変わりすることもありうるので、僕はまだ安心する気はない。
 
最後にメインとして書きたかった話がバッカの売却額についてである。Di Marzioによると、アトレティコ・マドリッドが興味を持っているようだが、実際に彼をいくら以上で売ればミランは損しないのか気になるところである。「え、セビージャからバイアウト・クルーズで行使した€30mだ」と思ったあなた、実は帳簿上そうではない。ちょっとした計算が必要だ。そのために必要な知識については、以下の宮本恒靖氏による日本経済新聞の記事、あるいは僕のツイートを参考にしていただきたい。
 
 
ただし、ナポリは例外で定額法を採用しない。5年契約の場合(例えば、イグアイン)、1年目から5年目まで、40%、30%、20%、7%、3%の順で償却する。
 
 
話をバッカに戻すと、彼の移籍金から今までの償却費を差し引くと、現在の簿価が算出される。それがトントンの売却額となる。
 
では、バッカの移籍金はいくらなのか。実は契約解除条項の€30mちょうどではない。2015年度(2015年12月31日締め)の財務諸表を読むと、€33,286,521と書かれている。余分な€3,286,521は代理人の手数料、いわゆるコミッションだ。コミッションは選手を獲得した年度の損益計算書に一気に計上するものだと思い込んでいたのだが、どうやら手数料込みで移籍金を貸借対照表に計上して償却するのが普通らしい。例えば、€8mで獲得したはずのルイス・アドリアーノは€14m、フリーで獲得した本田、アレックス、ロドリゴ・エーリはそれぞれ€1m(おそらく兄とお亡くなりになったブロンゼッティに入ったと考えられる)、€1.125m、€8m、下部組織から昇格したドンナルンマは€1.075mの値段がついている。勘の鋭い方は、某イタリア系オランダ人の代理人が最後の2人をクライアントにしていることに気づいたであろう。彼があの体型を維持できる理由はこれなのだ。ミラン同様にユヴェントスの財務諸表でも、フリーで獲得したはずのポグバに€1.635mの値段がついた。さらに、契約更新の際に€4.53mの手数料がM.R氏に支払われたので、2014年12月31日に取得原価が€6.165mに上がった。銭ゲバである。
 
 
次は償却費について述べよう。また、財務諸表を開くと、バッカは2015年7月2日に加入し、契約年数は5年(60か月)とあり、2015年12月31日までの償却費は€33,286,521の1/10(=6/60)の€3,328,652である。よって、獲得時から2016年6月30日までのそれは€3,328,652を単純に倍にした€6,657,304になる。
 
最後に償却費を移籍金から引くと、€26,629,217この値段で売れば、ミランは得も損もしない。結論は出た。ミランがバッカを売る最低額は€30mではなく€26mだとSky Sportが報道したのもそういう理由があると僕は考えている。
 
次はFFPか新聞社の親会社の話か売却の詳しい話か、気の向いたときにそのどれかについて書こうかと考えている。

新加入FWの効率性を算出しよう(2)

前回に引き続き、新加入FWが移籍金€1mあたりいくら得点を挙げたのか検証しよう。今回の対象チームはローマとユヴェントスである。

条件は前回から以下のように変更する。理由は地元紙の報道のほうが精度が高いと考えたから。
③市場価値はtransfermarkt.it、移籍金はクラブの公式発表がなければ『La Gazzetta dello Sport』を参照する

③市場価値はtransfermarkt.it、移籍金はクラブの公式発表がなければ、ローマの場合は『Corriere dello Sport』、ユヴェントスの場合は『Tuttosport』を参照する

ローマ
ハメド・サラー
0.68点
14点 €20.5m(レンタル料€5m+買い取り額€15.5m)
エディン・ジェコ
0.53点
8点 €15m(レンタル料€4m+買い取り額€11m)
ステファン・エル・シャラーウィ
0.56点
8点 €14.4m(レンタル料€1.4m+買い取り額€13m)
ディエゴ・ペロッティ
0.3点
3点 €10m(レンタル料€1m+買い取り額€9m)
ヤーゴ・ファルケ
0.25点
2点 €8m(レンタル料€1m+買い取り額€7m)
サディク・ウマル
0.67点
2点 €3m(レンタル料€0.5m+買い取り額€2.5m)
総計
0.52点
37点 €70.9m

ユヴェントス
パウロ・ディバラ
0.475点
19点 €40m(ボーナス€8m込み)
マリオ・マンジュキッチ
0.48点
10点 €21m(ボーナス€2m込み)
シモーネ・ザッザ
0.28点
5点 €18m
フアン・クアドラード
2.67点
4点 €1.5m(レンタル料)
総計
0.47点
38点 €80.5m

クアドラードはFWで登録されていたので、一応追加しておいた。彼は買い取り義務も買い取りオプションも付帯しないレンタルでチェルシーから移籍したので、驚異的な効率性を記録した。彼の去就は気になるところで、『The Guardian』の2か月前の記事によると、コンテ新監督が彼の復帰を望んでいるようだ。果してどうなることやら…… Vedremo.
www.theguardian.com

サラーがミランインテル、ローマ、ユヴェントスの4チームの新加入FW19人の中で、クアドラード、ニアング(0.71点)に次いで最も効率良く点を取っていた。しかし、クアドラードが実際に起用されたポジションがFWではなかったことに加え、ニアングは1年を通して試合に出場できなかったことを考慮に入れると、実質、サラーがコスパ最強になるだろう。
費用対効果をチーム単位で見ると、ローマ、ミランユヴェントスインテルの順になる。しかし、実際の順位表ではユヴェントスが優勝し、ローマとインテルがそれぞれ3位と4位を獲得し、ミランは無残にも7位に終わった。効率性がいくら良くとも、試合に勝たなければ何の意味もない。€40mかかっても、19点取って優勝に貢献したディバラのほうが優秀だ。

2回に渡って、移籍金とゴール数というファクターから新加入FWのコストパフォーマンスを計測してきたが、Calcio e Finanzaというサイトが検証しているように、選手の給与と減価償却を足した総コストとゴール数を用いる方法のほうが2年目以降の選手との比較が可能という点で有用である。同サイトによると、マッカローネが€0.6mの給与と減価償却ゼロ(サンプドリアと双方合意のもとで契約を解消してエンポリに完全移籍した)で、13得点を挙げたので、1ゴールあたり€0.05mしかかからなかった。つまり、1ゴールに5万ユーロしかかかっていない。一方で、ルイス・アドリアーノは€2.20mもかかった……
www.calcioefinanza.it

最後に一言、サバティーニが敏腕すぎやしないか……

新加入FWの効率性を算出しよう(1)

今シーズンのセリエAが3日前に閉幕したというこのタイミングで、新加入のFWを費用対効果(移籍金€1mあたりの得点数)から評価してみよう。今回はミランインテルの2チームのFWの効率性を検証する。単年の成績のみで評価するのはおかしなことかもしれないが、1年目の通知表ということで勘弁してね。

 

条件:

①レンタルで加入した選手に買い取りオプションや買い取り義務が設定されている場合は、その買い取り額とレンタル料を合算して移籍金とする(何も設定されていない有償レンタルの場合はレンタル料のみを移籍金とみなす)

②無償レンタルやレンタルバック、フリー移籍による新加入選手は加入時点での市場価値を移籍金とみなす

③市場価値はtransfermarkt.it、移籍金はクラブの公式発表がなければ、La Gazzetta dello Sportを参照する

④得点はセリエAで挙げたものに限る

 
0.6点
18点 €30m
ムバイェ・ニアング
0.71点
5点 €7m(市場価値)
ルイス・アドリアーノ
0.5点
4点 €8m
0.09点
1点 €11m(市場価値)
総計
0.5点
28点 €56m
 
0.35点
6点 €17m(レンタル料€2.5m+買い取り額€14.5m)
アデム・リャイッチ
0.24点
3点 €12.75m(レンタル料€1.75m+買い取り額€11m)
ジョナタン・ビアビアニ
0.25点
1点 €4m(市場価値)
エデル
0.08点
1点 €13m(レンタル料€2m+買い取り額€11m)
総計
0.27点
18点 €66.75m
 
ミランのほうが少ない移籍金で1年目のFWが得点をより多く挙げている。つまり、新加入FWの費用対効果はミランインテルに勝った。しかし、4位と7位という順位表の結果が覆ることはないので、そんなことを言っても無駄である。バロテッリとエデルにともに1点ずつしかゴールがないのはちと寂しい。
 
余談だがインテルが、2016/17シーズンのチケットの売掛債権をシンガポールの会社に譲渡して、€9.2mを得たらしい。こういうファクタリングはイタリアでは普通のことで、将来入る放映権料を先に売るケースは特に見られるとのことだが、それほどまでにキャッシュが早急に必要のようだ。お互いカツカツで大変やなあ……
 
(2)以降では、ユヴェントスとローマについて検証したい。ジェコさんの効率性はいかに……